お茶の水女子大学では、平成17年度から生命情報学の教育活動を明確に推し進めるようになりました。この活動は現在も大学院教育プログラム「生命情報学副専攻」として続けています。本学の大学院に在籍する方は、どなたでもこのプログラムを副専攻(minor)として履修することができます。このプログラムによって、生命情報学の基礎的なことを実習し、生命情報学研究の最先端を知る講義を受けることができます。
お茶の水女子大学には、生命情報学に関連する研究を展開する研究室がいくつかあります。平成20年度に立ち上がったライフサイエンス専攻に所属する由良敬研究室では、タンパク質の構造情報とゲノム塩基配列情報を用いたポストゲノムの生物学を展開しています。平成17年度に立ち上がった理学専攻の瀬々潤研究室(現在は期間限定で東京工業大学に異動)は、膨大な分子生物学測定データから有用情報を抽出する方法の研究を進めています。両研究室の実験道具はコンピュータです。白衣は着ません。
お茶の水女子大学には生命情報学教育研究センターがあり、由良敬教授がセンター長を兼務しています。このセンターの構成員は、いろいろな形で生命情報学と関係しています。
お茶の水女子大学における生命情報学の学部教育は、平成20年度から本格的に開始します。いままでは、生命情報学がどのような分野なのかを、学部学生に学んでももらう機会はあまりありませんでした。しかし平成20年度からは学部学生への授業が始まります。大学シラバスの全文検索において、「生命情報」「計算生物」「バイオインフォマティクス」それぞれの単語で授業を検索してみてください。想像よりも授業が少ないかもしれません。その理由はすぐにわかります。
生命情報学は、従来の学問分類ではあらわしにくい学際領域です。学際領域とは学問と学問の境界領域を意味します。「境界」というと物事のハシの様で妙な感じがします。しかし自然界の現象を、「これは物理現象」「それは化学現象」「これは数学」などと分類したのは人間の都合であり、自然がそのように分類されているわけではありません。そのため、生命現象のナゾを追いかけようとすると、旧来の学問体系の学際領域に突入するのは当然のことです。
生命情報学の概要を「生命情報学概論」や「計算生物学」「バイオインフォマティクス」で理解できれば、それからは自らの手で他学科他学部の授業を履修して、学際領域の体系を自ら構築することができます。自らがやってみたいこと、身につけたいことを明確にすれば、どの授業を履修すべきかは自ずと明らかになります。生物学科で開講されている「生物統計学」や「分子構造生物学」、情報科学科で開講されている「情報解析学」「環境情報論」「マルチメディア」、あるいは化学科で開講されている「分子生命科学」「高分子化学」や物理学科で開講されている「統計力学」などなどです。もちろん生物学の基礎的なことは知っている必要があります。生命情報学教育研究センターの構成員は、生命情報学を学んでみようと考えている学生さんの手助けをします。学部の1年〜3年の間に生命情報学関連授業を履修し、4年時の研究室配属で、由良研究室や瀬々研究室に進むことで、生命情報学の体系的な教育を受け、研究を展開できるようになります。